1. HOME
  2. ブログ
  3. 対談
  4. 第2回 「グローバルなモノづくり」とは、世界を見据えた「ト ータルなモノづくり」と考えよ 後編

BLOG

ブログ

対談

第2回 「グローバルなモノづくり」とは、世界を見据えた「ト ータルなモノづくり」と考えよ 後編

LEXER dialogue01

「格差社会」を是正するのは製造業の役割

鳥谷 最後にひと言だけ、いいでしょうか。この正月にインフルエンザにかかり、どこにも行けなかったんです(笑)。仕方がないのでAmazonでトマ・ピケティの『21世紀の資本』を購入し、600ページをひたすら読んでいました。


中村 聞きました。この対談がどうなるかと思って、心配していたんですよ。


鳥谷 この本には、資本収益率が経済成長率よりも高いということは歴史的な必然である、と書いてあるんです。つまりビル・ゲイツのような大金持ちは、お金を運用するだけでどんどん収益を得られる一方、普通のサラリーマンは経済の成長率と同じ程度にしか昇給しないはずなので、格差がどんどん広がっていくということ。その結果、このまま放っておけば、21世紀には世界的にどんどん格差が拡大する、というのがこの本の骨子です。


中村 なるほど。


鳥谷 その中に気になる箇所がありまして、ピケティは、生産技術の進歩は人的な技能を必要とし、教育によって高い能力を得た人は所得が増えるので、格差が減る方向に行くはずだ、と書いているのです。ところが、その一方で彼は、そんなものは空想だと述べています。彼の考え方にはかなり欧米社会の現状を踏まえたもので、アメリカの金融業などのように、経営者が何十億円という巨額の報酬を得て、異常な格差が生じている社会を前提にしていします。ところが日本はそこまで格差は広がっておらず、比較的まだ平等な社会だと思うのですね。ここで話を戻すと、ピケティは、格差社会を是正する一つの手法に教育がある、と言っているわけですが、それを製造業において空想ではなく現実にすることに貢献することが、われわれのデジタルエンジニアリングの役割ではないかと思うのです。


中村 彼は日本の製造業を知らないからですね。生産技術の進歩は間違いなく価値を生み出す源泉のひとつですが、そ
の価値化の活動はヨーロッパやアメリカではなく、この日本で実現してきているのです。ピケティは経済学者ですから、経済学者というものは過去の外形的な現象が分析対象です。生々しい価値を生む現場を体験しているわけではないのです。かつてスタン・リーに「スマイルカーブ」と言って揶揄された生産プロセスではありますが、ソニーの中村研究所の中村さんはそれに真っ向に対抗して、「ムサシカーブ」、つまり、生産プロセスから価値を生み出すということを主張されていました。この価値を生み出す活動を我々は忘れてしまってはいけません。

鳥谷 ええ、そうだと思います。彼はフランス人ですから、同書にはフランスとアメリカ、イギリスの話が結構出てくるんです。それにくらべれば日本はまだ平等な社会です。先ほどアメリカの製造業には、設計部門と製造部門に明確な役割分担があると言いました。そこにはまるで身分や階級の差があるようにすら感じます。これとは逆に、日本の設計と製造現場の関係も比較的対等です。そういう組織の平等性も活かしつつ、日本企業の生産技術における進歩を、われわれがITで支援していけたらと思います。そうした中で、人的な能力が向上し、各人が身につけた高い能力が所得
の拡大につながり、格差が是正されていくという理想的な社会を、製造業の発展を通じて実現するという取り組みを、中村さんとともに進めていくことができたら嬉しいですね。


中村 はい、そうですね。是非、日本発のオリジナルのデジタルエンジニアリングを展開する立場として、我々が力を併せていくことが重要と思います。これからもよろしくお願いします。今日は本当に幅広く、そして深い会話を交わさせていただき、とても楽しかったです。


鳥谷 こちらこそ、楽しかったです。有難うございました。


中村 有難うございました。

LEXER taidan05 2

取材・構成 ジャーナリスト加賀谷貢樹

関連記事

▼ LEXERソリューションサイト

GD.findi
生産シミュレーションで生産活動の現場とデジタルをつなぎ、未来に向けた意思決定を支援をいたします。