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第3回 エンジニアリングチェーンを強化し、価値と競争力 の再構築を図れ 中編

LEXER dialogue01

「金型産業復活」に懸ける思い

松本 いまのお話は非常に参考になりますね。私なりに少し見えてきたことがあります。料理にたとえるとわかりやすいのですが、おばあちゃんが肉じゃがを作るときに目分量で味加減をしているとします。でもここでちょっと甘さがほしいというとき、どうすればいいのか。タマネギの甘さを引き出す、砂糖を入れる、あるいは真逆に塩を少々入れるという、甘さを出すためのロジックがいろいろあると思われます。そいういうことを、職人的な感覚で肉じゃがを作ってきたおばあちゃんに伝えると、新しい料理を作るときのヒントになったりするのです。


中村 なるほど。


松本 同じように、自分の感覚を活かしてモノづくりをしている職人に、「○○さんがここをこのように加工しているのは、こういう理屈があるからなんだよね」と、理論的な裏付けを教えてあげると「自分はそういうことをしていたのか、凄いじゃないか」と納得するでしょう。お客様から突然「こんなことをやりたい」と言われて、皆が困っているときに、そういう古い職人さんから「こうやればいいのではないか」というアイデアが出てくることがありますが、彼の感覚の中にロジックを入れたことで生まれてくるものはかなりあると思いますね。


中村 おっしゃる通りです。


松本 そういう職人気質の現場が日本には数多くありますが、そこにロジカルに物事を考える手法や視点を投入することによって、現場力を向上させたり、現場力を再生することができると私は思っています。


中村 まさしく、今、それをやらなければいけないのです。私はそれを「現場の知」と呼んでいます。


松本 なるほど。


中村 私は、職人芸自体は「知」だと思っていません。技能なら技能を向上させる方法を「知」だと言っているわけです。


松本 金型業界の売上は20年前に年間6000億円ぐらいあったのですが、現在は約3000億円に落ち込んでいます。でも、いまのようなことを行うことで、日本の金型業界をもう一度、元気にすることができるのではないかと私は思っています。

中村 今であれば、まだ、間に合います。


松本 そうなんです。幸いなことに円安の恩恵も受けていますから。


中村 ただ、このまま放っておいたら、この潜在的な価値は消えてしまいます。いまのうちに、その潜在的な価値を顕在化させなければいけません。


松本 同感ですね。


中村 そのためのメソッドを、私はエンジニアリングにおける「現場の知」と呼んでいます。


松本 当社でも「In/Outの整理シート」というメソッドを使い、職人の感覚を論理的に解きほぐしていく取り組みを進めています。


中村 そうですか。その「知」が見えた瞬間、上流にも活かせます。設計手法も変わり、モジュール化のコンセプトも変わるのです。コスト構造ではなくて。品質、量産性を含む新たな設計コンセプトが反映できるようになるかもしれません。


松本 本当にそうですね。われわれはいま、IBUKIの取り組みを1つのパイロットケースとして、金型会社がこうやって復活して強くなり、稼いで雇用を生み出し、設備投資をしてもう1度、輝くというモデルを作っていきたいと考えています。金型業界がふたたび発展していくための第一歩になるといいですね。

中村 口だけではなく手も出し、資本も出すというわけですね。


松本 そうです。自分たちでデュー・デリジェンス(資産の適正評価)を行い、自社の内部留保から資本を投入しています。そして自ら経営者として入り、金型会社を復活させようとしているわけです。


中村 コンサルタントは、外からああだこうだと言いますが、一線
は越えません。


松本 「口も出しますが手も出します」が、われわれのコンセプトですから、そこに本気で取り組んで、結果を出そうということなんです。

取材・構成 ジャーナリスト加賀谷貢樹

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